2014年1月22日水曜日

モンマルトル、アートが街に、あふれとる。

さて、先日はサクレクール寺院を中心にモンマルトルをご紹介しましたが、

今回はモンマルトルのまた違った魅力をお届けしたいと思います。

サクレクール寺院の西側、徒歩2、3分のところにテルトル広場(Place du Tertre)があります。

たくさんの画家がここに集まり、絵を売ったり似顔絵を描いたりしています。




モンマルトルは「芸術家の街」と言われ、昔から芸術家の集まる街で、ゴッホ、ルノワール、ピカソ、モディリアーニなど、多くの画家がここで絵を描きました。

今でもテルトル広場を中心に多くの画家が絵を描き、昔から続くその雰囲気は衰えることがありません。

さて、ちょっくら広場をぶらぶらしてみましょう。


いつかこんな感じの絵を部屋に飾ってみたいものです。


様々な絵が溢れるこの広場は、さながらちょっとした美術館のようです。


観光客で賑わう広場に、バイオリン弾きが音色をつけます。


ぶらぶらしていると、裸体画を売っている80にも90にもなろうかというヨボヨボのお爺さんがいました。

「ほんまにこの人が描いたんかな?」と思って、その絵とお爺さんを交互にじろじろ見てると、

「お~キムタク!!」と言われました。

日本人客の気を引くために覚えたのでしょうが、なんかちょっと古いな…。

「それ、誰に教えてもらったん?」と聞くと、「この前ここを通った若い日本人の女の子だよ!」と言われました。

「この前!?嘘つけっ!」と思ったけど、確かにお爺さんからしたら「この前」なのかもしれません。

「似顔絵でも描いて欲しいのか?」と聞いてきたお爺さんは、「いいえ」と言う隙も与えない間で一言。

「わしゃ女しか描かんぞ!」って…。

うるさいエロじじい!


広場の片隅でチェスの一局。これだけで絵になります。


画家、音楽家、大道芸人など、芸術に情熱を捧げる人が溢れるモンマルトルはなんとも味のある街なのです。

そんなモンマルトルの街を舞台にした映画があります。

「アメリ」です。

フランスはもちろん、日本でも大ヒットした映画で、フランス映画といえばこの映画を挙げる人も多いでしょう。

妄想好きで、悪戯っ子、お節介でもある主人公のアメリが、モンマルトルを舞台に珍道中を繰り広げる物語。

モンマルトルを歩いていると、アメリに出てきた八百屋さんを発見。


映画「アメリ」に出てくる八百屋さん


どこにでもある普通の八百屋さんでした。

さらに歩くと、主人公のアメリが働いていたカフェ「レ・ドゥー・ムーラン(Les Deux Moulins)」がありました。




店内はお客さんでいっぱいでしたが、まさかの映画でアメリが座っていた席だけが空いていました。

店員さん曰く「この席は日本人観光客のために空けてあるんだ」とのこと。

確かに、日本人ほど「ロケ地めぐり」が好きな人たちもいないかもしれません。




透明のボードにはアメリ役を演じ、今やフランスを代表する女優となったオドレイ・トトゥのポスターとサインがありました。




映画にも登場したレ・ドゥー・ムーランの名物がこの「クレームブリュレ」。

美味しいの一言です。

「アメリ」を観たことのない方は是非一度ご覧ください。

きっとモンマルトルの魅力が伝わってくると思います。


さて、「レ・ドゥー・ムーラン」から南へ数分下ったところには「ムーラン・ルージュ」という有名な建物があります。


ムーラン・ルージュ


「ムーラン・ルージュ(Moulin Rouge)」はフランス語で「赤い風車」という意味で、まったくその名前のまんまの建物です。

何の建物かと言うと、実はここ、映画化されるほど有名な「高級キャバレー」なんです。

つまり、半裸の女性たちがここで歌やダンスなどのショーをするわけです。

あ!絶対あのエロじじい行ってるやん!

絶対裸体画売った金でキャバレー行ってるやん!

なんならキャバレーで裸体画描いてるやん!

※キャバレーは決して卑猥な場所ではありません。


最後に、モンマルトルの隠れキャラをご紹介してお別れしましょう。




20世紀を代表するフランスの有名作家マルセル・エイメの小説「壁抜け男」に登場するデュティユルの像です。

小説からは抜け出せましたが、モンマルトルの壁は抜けれなかったようです。


みなさんも、パリを訪れる機会があれば、是非一度モンマルトルに行ってみてください。

この壁から抜けれなくなったおじさんのように、あなたもモンマルトルの虜になるでしょう。



山田 剛士

2014年1月15日水曜日

囲む黒、頭真っ白、青二才。

10年前、僕は初めてフランス・パリの地を踏みました。

パリに着いた翌日、僕が最初に向かったのが「モンマルトル」という場所でした。

「Barbès Rochechouart」という駅で降りるはずが、間違えて終点の「Porte de Clignancourt」という駅に降り立ちました。

駅から外に出た僕は、目の前のその光景に目を疑いました。

見渡す限り黒人しかいない…。

パリ2日目の17歳の青二才には、その場所はただただ「恐怖」でしかありませんでした。

まるでライオンの檻に入れられたうさぎのような心持ちでした。

当時はまだフランス語なんてカタコトの「ぼんじゅーる」と「めるしー」しか言えなかった僕は、とにかくそこを抜けだそうと速足で歩きます。

なぜ駅に戻らなかったのかは覚えていませんが、歩いているうちに駅もどこかわからなくなりました。

歩けども歩けども、でっかい黒人やいかついアラブ人が溢れていました。

実は、このPorte de Clignancourtという場所、パリ市内で最も治安の悪いと言われるパリ市内の一番北に位置しており、この近辺には、黒人やアラブ人をはじめとする移民層が多いのです。

さらにこのPorte de Clignancourtはパリでも最大規模の蚤の市が開催される場所で、安いものを求めてあちこちから貧困層が集まる場所だったのです。

たとえ身ぐるみ剥がされようとも、命さえ助かればいいぐらいの気持ちで、とにかく速歩きでひたすらに歩き続けました。

ようやく駅を見つけた僕は、電車に飛び乗り、結局、モンマルトルには行くことなくそのまま帰宅…。

ほろ苦い17歳の淡い記憶でございました。

その一ヶ月後、もう一度モンマルトルに向かってみましたら、今度は迷うことなく辿り着きました。

そして、このモンマルトルと言う場所に魅了され、以来、幾度となくここに足を運び、パリで一番のお気に入りスポットとなりました。

エッフェル塔、凱旋門、ノートルダム寺院、ルーヴル美術館、シャンゼリゼ通り、ヴェルサイユ宮殿など、パリには観光名所がたくさんありますが、僕の中では、他のどこよりもモンマルトルにパリらしさを感じます。

モンマルトルは僕の庭のようなもんです。

というわけで、今回は僕の庭である「モンマルトル」にみなさんをお連れしましょう。

それでは行きますよ~「On y va!!」 ※On y va(オニヴァ) は英語で言うところのLet's go!!

モンマルトルに行くには、メトロに乗って、4番線の「Barbès Rochechouart」(モンマルトルまで徒歩10分)、もしくは2番線の「Anvers」(モンマルトルまで徒歩3分)で降りてください。

駅を降りて、お土産屋さんがひしめき合う坂道を登ると、そこにそびえ立つのは…




モンマルトルのシンボルともいえるサクレクール寺院(Basilique du Sacré-Coeur)です。

パリでは珍しいビザンチン様式というギリシャやトルコなどでよくみられる建築様式が特徴的な教会です。

ちなみに、サクレ(Sacré)とは「聖なる」、クール(Coeur)とは「心」という意味で、この教会はつまり「聖なる心」という何ともお洒落な名が冠されています。

その名が表すように、真っ白で純白な色をしています。




休日になると、サクレクール寺院の下にはたくさんの若者や観光客が集まります。

教会の中の椅子に座って、あるいは教会下の階段や芝生に座ってボケーッとしているだけで、何だか心が洗われるような気持ちになります。

しかし、ここには「聖なる心」とは裏腹の「汚い心」を持った輩も存在します。


画像はthe Bazooka.comより引用


僕が「ミサンガおじさん」と呼ぶ輩です。

サクレクール寺院の敷地内に入ってすぐのところで待ち構えるミサンガおじさんたちは、

観光客を見つけると、数人でやってきて否応なしに絡んできます。

気軽な感じで声を掛け、勝手に腕にミサンガを巻いてきます。

断っても断ってもかなりしつこく絡んできますのでご注意ください。

彼らの口癖は「ノーマネー!ノーマネー!」ですが、断りきれずに巻かれてしまうと、高額なミサンガ料金を取られてしまいます。

だいたい20~30ユーロ(約3000円~4000円)要求してきます。

ノーマネーというのは「お金を取らない」ということではなく、「俺にはお金がない(=だからお前からぼったくる)」ということなのでしょうか…。

なんとかミサンガおじさんを振り切って、サクレクール寺院のある丘の上まで来たら、回れ右して後ろを振り返ってみてください。

ご覧ください、この大パノラマ!!ここからパリの街並みが一望できます。




さて、パリの街並みをご堪能いただいたら、続いて左の方に見える街頭をご覧ください。

街頭に人が登っていますね。

これは僕が「リフティングおじさん」と呼ぶ謎のパフォーマーです。

もうちょっと近くで見てみましょう。




口にペンをくわえて、そのペン先でボールを回しております。

いつもより余計に回しております。




片手を離せば確実に救急車もんですが、リフティングおじさんは落ちません。ボールも落としません。




さらに、この小さく狭い台の上でリフティングを披露。

ボールさばきが乱れてここから足を滑らせたら確実に、丘の下までゴロンゴロンなりますが、リフティングおじさんは落ちません。ボールも落としません。

リフティングおじさんは、いつここにいるのかという情報がないため、行ってもいなかったり、行ったらちょうど終わったところやったりします。

リフティングおじさんに会えたらラッキーです。幸運なことがあるかもしれません。

しかも、落ちない、落とさないということから、世界中から受験生がやってきます。

って僕が言うてるだけです。

他にもサクレクール寺院の周辺では、色んなパフォーマンスが行われています。


モンマルトルはこのサクレクール寺院だけではないのですが、長くなったので、今回はここまで。

というわけで、モンマルトル第2編に続く…


山田 剛士

2014年1月14日火曜日

白球と、夢を追いかけ、芝を舞う。

今日は成人式ですね。

新成人のみなさん、おめでとうございます。

新成人と言えば…フランスで出会った3人の青年を思い出します。


僕が毎週日曜日に子供たちのコーチをしていたNSC(Nippon Soccer Club)は、

ACBB(Athletic Club Boulogne-Billancourt)というチームのグランドを借りて活動しているのですが、

そのACBBに流通経済大学(通称流経大)から3人の青年、はるひ、健、慶太がサッカー留学のため入団してきたのです。

流経大サッカー部は、ここ十数年の間に50人以上のプロ選手を輩出している大学サッカーの名門。

ACBBと流経大の提携事業の一環でフランスにやって来た彼ら3人は、NSCの練習もお手伝いしてくれていました。


子供たちの前でリフティングを披露する慶太


高校時代にフランスに一年間サッカー留学していた僕は、彼らをかつての自分と重ね合わせて見ていました。

同じような境遇を経験している先輩として、何らかの形で彼らの手助けをしてあげたいと思っていたのですが、

彼らがフランスに来たのはちょうど僕が帰国する1か月前で、仕事も忙しく、なかなかそういったこともできませんでした。

そんな中、一つだけ、手助けというほどのことではないのですが、地元紙「ル・パリジャン」が彼らを取材したいとの話があったので、僕が志願して通訳をさせていただきました。

彼らが滞在するパリ国際学生都市(フランスで学問等を学ぶために世界中から集まる留学生が宿泊、滞在する施設)で取材は行われました。


ル・パリジャン紙の記者から取材を受ける3人と通訳をする山田


普段は普通の大学生、どこにでも居そうな若者ですが、サッカーの話となると目つきが変わり、

フランスでの意気込みを語る彼らの姿に、サッカーに対する情熱を垣間見ることができました。


インタビューの後は、ル・パリジャン紙専属のカメラマンがやって来て、写真撮影が始まりました。


その立ち居振る舞いはすでにプロの風格

これがまた長い…

フランス人ってたいていそうなのですが、自分の好きなことに対しては非常にこだわりが強く、自分が納得いくまで時間をかけます。

まさかカメラマンの写真に対する情熱まで感じるとは思いませんでした。

3人は若干うんざりしていましたが(笑)


そして、数日後、3人の記事がル・パリジャン紙に掲載されました。


ル・パリジャン紙の記事


ル・パリジャン紙はフランスの地方紙では最大の新聞で、その新聞にここまで大きく扱われたことはすでに快挙と言えます。

しかし、彼らはそんなことでは満足するはずがありません。

もっと先のより大きな目標に目を向けているはずです。


ACBB(左側オレンジのユニフォーム)の試合風景。

現在、フランス6部リーグに所属するACBBは、CFA2(フランス5部リーグ)への昇格を目指しています。

6部リーグとはいえ非常にレベルは高く、中には元プロ選手も多くいます。

カップ戦のクープ・ドゥ・フランス(日本でいう天皇杯)ではあと2試合勝てば1部リーグのチームと対戦できるところまでいったようですし、リーグ戦でも現在4位と、昇格を狙える位置につけており、これから昇格へ向けた熾烈な争いが繰り広げられるでしょう。

彼ら3人にとってもここからが勝負。

厳しい戦いの中で揉まれ、サッカー選手としても、また人間としても大きくなっていって欲しいと思います。


(左から)健、山田、はるひ


異国の地でサッカーをするということは本当に大変なことです。

だからこそ、そこから得られるものは多くあるでしょうし、日本では感じられない喜びや楽しさも味わえると思います。

3人の若きサムライの雄姿を遠く日本から応援しています。

はるひ、健、慶太、頑張れ!そして、成人おめでとう!


山田 剛士